僕と三線の出会いは遡る事、数年 きれいな星空のもと沖縄の離島の砂浜に野宿をしていた夜中 ふと目をさますと、どこからともなく”テンテンテン・・・” この夜が忘れられず離島を出発し沖縄本島にて三線屋を覗いてまわり 一番安いやつを人の良さそうな老夫婦のお店で買いました それからまた数年が経ち 欲も出てきて良い楽器が欲しくなり、それを探しに再び沖縄に向かいます 沖縄山原(やんばる)のとある道の駅にて、 20cm程の高さ、箸程の太さの黒木(黒檀)の鉢植えが200円で売られていました。 三線の棹に使えるくらいになるまでは、どの位の時間が必要なんだろう? 知ってますか? 同じ黒木でも芯と周りでは値段が全然変わるんですよ。 芯材は真っ黒でとても硬くて、値段も高いのです。 目がつまってれば当然重くなるし、だから三線は重いほうが良いって言われるんでしょうね。 200円の黒木が何百倍、何千倍の価値を持つのは時間と環境と、加えて職人の技の兼ね合い。 木は切ってから、すぐに棹にしてしまうと水分が抜けるにつれて棹が変型してしまいます。 だから寝かせるんだって、な,なんと20年! 僕が手にした三線と僕との出会いは一体いつごろから準備されていたんだろう? 思わぬ所で時間の偉大さと遭遇、出会いの妙。 某職人(といっても政雄先生なんだけど)曰く 「三線に値段は無い、俺が100万と言ったら100万だし、15万といったら15万なんだ」 この発言はちょっと恐いと思うかもしれないけど、やっぱり真実ですよ 三線の流行にのって色々なものが作られてますよ。 僕が見たひどいやつだと棹が木じゃなくて樹脂なの。塗ってあるから外見じゃわからない。 壊れてみてようやく分かる 僕は沖縄で金じゃどうにもならないものを発見しました。 そして僕が今手にした三線は良き出会いが僕に授けてくれたものの1つの結晶なんです。 |
戦時中、とあるガマ(沖縄にある自然の濠、洞くつ)での話し そのガマの中には民間人、日本兵合わせて300名が隠れていたんだけど、 中で赤ちゃんが泣き出した 母親は必死になだめるんだけど泣き止まない 口火を切ったのは日本兵、泣き止まなければ殺せって言った アメリカ兵に見つかっちゃうから 母親はおっぱいをあげるように赤ちゃんをぎゅうーっと抱きしめて しばらくして赤ちゃんがどさりって下に落ちた 落ちた赤ちゃんはもう動かなかった 母親はへらへら笑いながら外へ出ていこうとするんだって 日本兵が止まれって言っても、聞こえないかのように そのうち銃声が聞こえて でもそのお母さんが撃たれたのかどうかはわからなかったって 政雄先生がまだ小さかった時にその目で見た出来ごと 今でも、そのガマは読谷に残ってます、僕も見てきました 200メートルくらいの洞くつ 結局、そのガマにいた人間はアメリカ兵に見つかって捕虜になるんだけど ガマを出る時、外に出てみたら死体の山 先生は死体につまずきながら、ふんずけながら、アメリカ兵の所まで行って そうして収容所の生活が始まった 地獄絵図のような中 その収容所で使っていた、簡易ベッドの骨木を使って アメリカの缶からを足して作ったのが”かんから三線” 沖縄全土に散乱している死体を片づけに 捕虜がトラックで連れていかれるんだけど その荷台でかんから三線を使って PW無情(PWとは捕虜の背中に書かれていた文字で捕虜の事)とか 寂しさ、みじめさ、地獄の苦しみを打ち消すかのようにめちゃめちゃに楽しく どんちゃかどんちゃかやったんだって 見張りのアメリカ兵もカービン銃を置いていっと缶を叩きながら参加してたって ちなみに日本兵を運ぶ時のアメリカ兵はカービン銃の引き金から 指を放さなかったっていうから、凄い違いです かんから三線は厚紙を使ったり、落下傘をつかったりして 徐々に形を変えて行くんだけど名前忘れちゃったなあ、 落下傘のやつがウチナーグチで”らっかさんばい” 落下傘は使わなくなったやつを軍からもらうらしいんだけど、 現琉球民謡最大流派の宗家、某大先生(小?)はいつも新しいのを使っていたそうです。 絶望の中、なんとか明るさを取り戻そうとして作ったのが”三線”だったなんて 僕はこの話しにえらく感動しちゃって、かんから三線も欲しいなあって思った なんというかまあ、堅い言い方で言えば”平和の象徴” この話を前川守賢さんていう沖縄民謡歌手でめちゃめちゃ売れてる人なんだけど その人に話したら、じゃああげるって で、今僕の部屋にはかんから三線があります なんとお礼してよいやらおそるべし沖縄です ここにPW無情の歌詞を一部載せておきます 勝ち戦さ願てぃ 山ぐまいさしが 今や捕らわりてぃ 屋嘉に泣ちゅさ PW 哀りなむん 注・・・屋嘉っていうのは収容所があった場所です。 注2・・・戦時中のかんから三線は有名ですが、かんから三線は戦前よりあったそうです |
これを見ながらやればばっちり! click→拡大版 資料提供 照屋太鼓三味線店 |